導入事例
取材年月:2026年04月
所沢市東部クリーンセンターは所沢市とJFEエンジニアリングらが出資し運営する地域新電力会社であるところざわ未来電力から電力の供給を受けながら、24時間365日稼働しています。焼却施設はメンテナンス期間を除いて燃焼状態を維持することが大前提であり、安定した電力の確保が操業の根幹を担っています。
当施設で発電した電力の売電収益は所沢市に帰属しており、雷の接近時には停電の影響を受ける前に必要な対応をとることが求められます。その判断は売電収益にも関わるため、リアルタイムで根拠のある落雷情報が不可欠でした。そこで導入したのが「Lightning Station」です。
最も深刻なのは、私たちが「ブラックアウト」と呼ぶ全停電です。停電が発生すると機器冷却水ポンプをはじめとする設備が停止し、水と電気が途絶えると運転継続困難な状況になります。全停電すると、復旧作業も容易ではなく、正常な操業状態に戻すまで4〜5時間を要します。
実際、2024年度には当施設で2回のブラックアウトが発生しました。全国で受託運営する約33か所の他の工場でも、年に数回はブラックアウトが発生している状況です。

中央制御室に設置した大型モニターに「Lightning Station」の画面を常時表示し、4グループ・各4名の運転員が24時間体制で監視しています。落雷の接近状況は画面をひと目見るだけで把握でき、所定の距離に達した段階でマニュアルに従い対応します。
① 「Lightning Station」で施設から半径15km圏内への落雷を検知
→ 所定の手順に基づき、対応準備を開始
② 半径10km圏内への落雷を検知、警報が表示される
→ 運転員はマニュアルに従い対応
③ 落雷の検知エリアが10km圏外に遠ざかったことを確認
→ 復帰手順を実施
この10kmという基準は感覚で決めたものではありません。当施設に電力を供給する東京電力・狭山変電所までの距離が約10kmであることを根拠にしています。
運用マニュアルはシンプルな1〜2枚の手順書にまとめており、顧客(所沢市様)にも事前に承諾を得た上で策定しました。現場では夜勤時間帯を活用した定期的な予行演習も行っており、実際に雷が接近した際もスムーズに対応できるよう備えています。
天気予報サイトで雲の動きを確認しながら対応していました。しかし、これには2つの課題がありました。
① 雷情報の精度が低い
リアルタイムの情報ではなく、15〜30分程度の遅延がありました。雷雲がどこにあるかも大まかな情報しか得られず、ピンポイントでの把握はできませんでした。
② 判断基準がなく、運転員に不安が残る
明確な判断基準がなく、判断は運転員それぞれに委ねられていました。雷が接近した際の対応は所沢市への売電収益にも関わるため、運転員にとって「いつ対応を始めるべきか」「対応を進めて問題ないか」という不安を抱えながら判断するしかない状況でした。
結果として安全を優先した早めの落雷対応が増え、検証期間として設定した2024年の5〜9月の間に、対応を行ったのは数十回に上りました。
過去の経験にて活用実績があり、その落雷情報の高い精度を実体験として知っていたためです。導入にあたっては1〜2か月のトライアルを実施し、電気主任技術者も含めた運転チームで検証した上で正式採用を決定しました。
最大の決め手は落雷情報の精度の高さです。「あと何kmで雷雲が来るか」がリアルタイムでわかるため、これまで曖昧だった判断基準を具体的な数値として定めることができました。
もうひとつは、運転員が安心して利用できる点です。導入前に運転員からも「より安心して信頼できるものでなければ使えない」という声があり、トライアルを経て問題なく運用できることを確認した上で採用を決めました。

導入前の24年度実績に対し、25年度は回数が半減しました。さらに2025年度は3回の停電が発生しましたが、「Lightning Station」による事前の対応によって施設への影響を回避することができました。
運転員からは「もの凄く操業が楽になった」「特に雷の多い6月から9月の4か月間は本当に助かっています」という声が上がっています。
この取り組みは、「曖昧な基準をなくし、しっかりと基準を決めて運用する」ことが評価され、JFEエンジニアリングの全社QCサークル活動において、約300サークルの中から上位10サークルに入りました。
「Lightning Station」の導入により、運転員が安心して操業に集中できる環境と、施設の安定稼働を両立する基盤をつくることができました。
今後は、天候情報のさらなる精度向上に期待しています。また、全国で受託運営する他の施設でも関心を持つ声が出てきており、今後の広がりにも注目しています。
JFEエンジニアリング株式会社様、お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
取材制作: カスタマワイズ