2023.02.14

世界の雷分布

その他の話題

世界ではどれくらいの頻度で雷が発生しているのでしょうか。また、雷のよく発生する場所にはどのような特徴があるのでしょうか。

人工衛星で雷分布がわかるようになった

日本には、北関東など、特に雷の多い場所として知られている地域があります。では、世界ではどうでしょうか。やはり、雷の発生する場所には偏りがあるのでしょうか。

そもそも、地球全体で、同じように観測を行うことは実はとても難しいです。というのも、街の中だけでなく、海の上や高山、インフラの充実していない場所などにも偏りなく同じ観測機器を設置し、同時にデータを取らなくてはいけないからです。しかし、人工衛星から広範囲の雷が観測できるようになり、世界中の雷の分布がわかるようになりました。


▲電離層観測衛星「うめ」(ISS)
出典:ISAS/JAXA

人工衛星では、宇宙から雷の発する光や電磁波をとらえています。最初に雷を人工衛星でとらえたのは1978年に打ち上げられた日本の人工衛星の「うめ2号」でした。もともとこの人工衛星は電波予報(※)を行うために打ち上げられたのですが、落雷のときに放射される電磁波を記録し、宇宙から電磁波をとらえることを世界に示しました。その後、雷の光については雷観測のためのセンサーが開発され、1995年から観測されるようになりました。その後2012年打ち上げの国際宇宙ステーションからも雷の観測が行われています。
※電波予報:ラジオの送受信などに影響を与える電離層の出現を通報・予報するもの。
 電離層(電離圏):太陽紫外線やX線の吸収などにより、その一部がイオンと電子に分かれた領域。大気上層60km~1,000km以上にわたり存在。

 

世界で雷の多い場所はどこ?

人工衛星による観測で、今では全世界で毎秒50回程度の頻度で雷が発生していることがわかっています。そして、雷の発生しやすい場所には一定の傾向があり、陸地は海の10倍ほどの頻度で発生していることもわかりました。しかも赤道付近が多い傾向にあるのです。

アメリカのMicrolab-1衛星に搭載されたOTD(Optical Transient Detector, 光学式一時検出器) 、熱帯降雨観測衛星(TRMM)に搭載された人工衛星LIS(Lightning Imaging Sensor)、国際宇宙ステーションに搭載されたLISなどの複数のセンサーからの観測に基づいて、1995 – 2020年の間に雷が発生した場所と回数を表示したもの。
出典:NASA

なぜ、発生場所にこのような偏りがあるのでしょうか。まず、陸地は海よりも温まりやすいため、地面近くの空気が暖かく、上空の空気が冷たい状態になりやすくなります。このように地表が暖かく上空が冷たいと、大気の状態が不安定になって積乱雲が発生しやすいのです。(参考:積乱雲の発生条件
陸地の中では南米にあるベネズエラやコロンビア、アフリカ大陸のコンゴの東側で特に雷が多く発生しています。このあたりは赤道に近く、地球上でもっとも多くの太陽エネルギーが集まりやすいため、雷が発生しやすい傾向にあります。

そして、ヒマラヤ山脈やアンデス山脈でも雷は発生しやすいです。海からの暖かく湿った空気が山によって強制的に上昇して積乱雲ができやすいからです。

しかし、意外なことに、とても熱そうな砂漠では雷はさほど発生しません。これは、そもそも積乱雲に必要な空気中の水蒸気が少ないからです。

では、極地ではどうなのでしょうか。南極での雷は確認されていませんが、北極では雷が発生したという記録があります。雷が発生した最北端のギネス記録(2023年2月現在)は、89.53°N、北極点から52km南にある地点です。

なお、日本では北海道も雷の少ないエリアとして知られています。
(参考)雷ぶらり-雷ランキング(2022年度 年間落雷密度)

 

今井明子[気象予報士/サイエンスライター]
Twitter(@imaia78)

 

参考文献:
「雷をひもとけば-神話から最新の避雷対策まで」新藤 孝敏 著 電気学会
「雷の疑問56」鴨川 仁・ 吉田 智・ 森本健志 共著 成山堂出版
「稲妻と雷の図鑑」吉田 智 グラフィック社
宇宙天気予報HP(https://swc.nict.go.jp/knowledge/ionosphere.html
Most northerly lightning(https://www.guinnessworldrecords.jp/world-records/590923-most-northerly-lightning
NASA :A New Look at Earth’s Lightning(https://earthobservatory.nasa.gov/images/149301/a-new-look-at-earths-lightning
NASA : The Maracaibo Beacon(https://www.earthdata.nasa.gov/learn/sensing-our-planet/the-maracaibo-beacon