雷のメカニズム

一瞬に見える雷も実はいくつかの段階があります

積乱雲が最も発達している最盛期に雷は発生します。
雷は一瞬に見える現象ですが、実はいくつかのプロセスがあります。
ここで、どのようなプロセスで雷がおこるのか、夏の典型的な雷(下向き負極性雷)の例をあげて見ていきましょう。

雷が起こる前、雲内では偏った電荷をなくそうとする動きがおこります。

雷放電が起こる前の雲の中は、上層はプラス、-10℃以下の中層はマイナス、それより下層はプラスに帯電しています。
これを三極構造といいます。
雲内では偏った電荷をなくそうとするように、まず、中層のマイナス電荷が雲の下層のプラス電荷のほうに移動して、雲内で中和をはじめます
このマイナスの電荷がさらに雲下まで移動し、地表に向かいます。

まず、雲の下から少しずつ雷放電が進んできます。

雷は一気に地上に到達しているように見えます。しかし、実際は雲の下から出た雷放電は、進んではいったん止まり、進んではいったん止まり、を繰り返して進んでいきます。
このようにステップ状に進むことから、ステップトリーダー(段階型前駆放電)と呼ばれます。

*ひとつのステップの長さは平均50mとされていますが、ステップ間の時間間隔は地上に近づくほど短くなります。なぜこのように進むのかよく分かっていませんが、空気が電気を通さない絶縁体であるためと考えられています。

地表に到達した雷は、再び雲に戻っていきます。これが私たちの見ている雷です。

ステップトリーダーが地表付近までたどりつくと、地上からステップトリーダーの先端に向かって放電が始まり、ステップトリーダーの先端と地上からの放電(お迎え放電)が結びついて放電経路ができあがります。

ステップトリーダーの先端と地上からの放電が結びついた後、地表から放電経路を通って雲に流れます。
これをリターンストローク(帰還雷撃)といいます。リターンストロークは、光の速度の半分くらいの速度で雲に向かい、この時が雷の閃光と電流値が最も強くなります。
私たちが落雷と認識しているのはこのリターンストロークの時です。

雲と地表へ雷放電は行ったり来たりします。

ステップトリーダーとリターンストロークが一つの雷撃現象です。しかし、この一回の流れで雲内の電荷が中和されない場合があります。この場合、少しの時間をおいて、雲から地上に向かい再びリーダと呼ばれる放電が始まります。
最初は、ステップ状に放電がのびてきましたが、2回目以降は電荷の通る道筋ができていますので、ストレートに地表に向かいます。
これをダートリーダー(矢形前駆放電)といいます。
ダートリーダが地表に達すると再度リターンストロークがおこります。この繰り返しが平均で3~4回、多い時では10回以上繰り返されます。