2021.06.01

雷のことわざ

その他の話題

雷にはさまざまなことわざや言い伝えがあります。

雷の発生のしかたで季節の移ろいを予想するものや、農業の収穫量や漁業の漁獲量を予想するもの、そして雷対策のアドバイスなどです。
そのなかでも、今回は季節の移ろいについて予想することわざについて気象学的な観点から解説していきます。

雷が鳴ると梅雨が明ける

このことわざは、梅雨末期に雷が鳴りやすいことから言い伝えられてきました。
なぜ、梅雨末期には雷が鳴りやすいのでしょうか。

梅雨をもたらす原因は梅雨前線です。
梅雨前線は、北の涼しい空気でできた高気圧と、南の高温多湿な高気圧の境目にできます。梅雨前線の北側は、乱層雲(雨雲)による雨が降りやすいです。乱層雲からの雨は、しとしとと静かに降る雨で、雷が発生することはありません。

その一方で、梅雨前線の南側は、積乱雲による雨が降りやすくなります。こちらの雨は土砂降りです。積乱雲は雷雲という別名で知られている通り、雨に伴って雷が発生することもあります。

梅雨末期になると、梅雨前線の南にある高温多湿な太平洋高気圧の勢力が強まり、梅雨前線は次第に北上していきます。
すなわち、今まで梅雨前線の北側だった地域が、梅雨前線の南側になります。すると、雨の降り方がしとしととした雨から雷を伴う激しい雨に変わります。
そして梅雨前線がさらに北上すると、その場所は梅雨明けして夏の高温多湿な空気に覆われます。だから、雷が鳴るのは梅雨明け間近のサインだといわれているのです。

 

夜鳴る雷は長雨

夜に鳴る雷は、昼間に鳴る雷と違って長くなるということわざです。
このことわざが示す、「夜に鳴る雷」に対して「昼間に鳴る雷」とは、主に真夏の暑さが原因で発生する夕立のことをいいます。夕立は通常はひとつの積乱雲によって発生します。ひとつの積乱雲の寿命は1時間程度なので、雷雨もその程度の時間で終わってしまいます。

これに対して、夜に雷が鳴る状態というのは、低気圧や前線が接近したとき、そして梅雨前線が活発化しているようなときです。その際、上空に強い寒気が流れ込むと、大気の状態が不安定になり、上昇気流が発生して夜でも積乱雲が発達やすくなります。

低気圧や前線の通過には時間がかかりますし、梅雨前線もその場に停滞しやすいので、昼間の雷よりもどうしても長くなります。それで、夜の雷は長雨といわれたのでしょう。

もちろん、真夏になると夕立が夜に発生することもあるので、夜の雷が必ずしも長雨になるとは限りません。そして、前線や低気圧も昼夜関係なく発生するので、昼の雷がすぐに終わるわけでもありません。あくまで、夜の雷は「長雨になることが多い傾向にある」ということです。

 

今井明子[気象予報士/サイエンスライター]
Twitter(@imaia78)

 

参考文献:
「雷さんと私」宅間 正夫著 三月書房
雷のひみつ」学研まんがひみつ文庫
健康天気ことわざ 「雷が鳴ったら桑の葉を頭に載せる」(bioweather.net)