2021.11.26

雷の季語

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雷は年中発生し、四季それぞれに雷の季語があります。

雷というと、夏のイメージが強いです。しかし、意外に思えるかもしれませんが、雷は年中発生しています。そして、雷の季語も春夏秋冬それぞれの季節についてあらわすものが存在します。

雷の季語は夏だけじゃない

俳句には季節をあらわす季語が欠かせません。雷の季語もたくさんあります。
「雷は夏に鳴ることが多いから、夏の季語なのかな?」と思うかもしれませんが、雷は年中発生することもあって四季それぞれに雷の季語があります。
いったいどのようなものがあるのでしょうか。

春の雷の季語は、「春雷」「初雷」「虫出しの雷」などが挙げられます。
春は大陸から移動性の高気圧と低気圧が西から東へと移動します。低気圧は前線を伴うことも多く、前線が通過するときに雷が発生することがあります。これが「春雷」です。
春の一番初めに鳴る雷は「初雷」と呼ばれますが、ちょうど啓蟄の頃(毎年3月6日頃)に鳴ることから、「虫出しの雷」とも呼ばれます。

夏は一番雷が多い季節なので、「雷」は夏の季語となります。ほか、「雷雨」「雷鳴」「いかづち」「遠雷」なども夏の季語です。梅雨明け間近に鳴る雷は「梅雨雷」と呼ばれます。遠雷は、遠くのほうで聞こえる雷です。

秋の雷の季語は「稲妻」や「稲光」です。稲刈りの季節ですから「稲」のつくものが多いですね。これらは雷の光を指す言葉です。昔の人は雷光に稲を実らせる霊力があると信じてきたため、「稲妻」という言葉があるのです。

 

なぜ、冬の雷を「ぶり起こし」というのか

日本海側では冬にも雷が鳴ります。冬の雷の季語としては、「寒雷」や「ぶり起こし」などが挙げられます。冬の雷が鳴る頃になると日本海を回遊しているブリが獲れ始めることから、冬の雷のことを「ぶり起こし」と呼ぶ地方もあるのです。

ぶり起こしは、日本海側の限られた地域で使われる言葉です。ブリは日本近海のどこでも獲れますし、いつでも獲れます。なのになぜ、日本海側で冬に使われる言葉なのでしょうか。それは、冬に獲れる「寒ブリ」がほかの季節で獲れるブリよりも群を抜いておいしいからです。

ブリは秋ごろになると、産卵と越冬のためにエサをたくさん食べて丸々と太ります。ほかの季節では、脂がのっているのはお腹だけなのですが、寒ブリは背中まで脂のサシが入るのです。特に北陸地方で獲れるものは、富山湾の氷見漁港で水揚げされる「ひみ寒ぶり」など、ブランド魚として流通しているものも多いです。

話はそれましたが、このように、四季折々の雷の季語があることがおわかりでしょうか。

実際に雷の統計を見ても、夏が多いとはいえ、年中雷が発生していることがよくわかります。また、日本海側は冬にも雷が発生するため、年間の落雷「日数」は日本海側が多くなっているのです。冬の雷は、世界的に見ても日本の日本海側とノルウェーの太西洋岸でしか見られない珍しい現象ですので、雷をあらわす季語が1年を通して存在するのも日本ならではといえそうですね。

 

今井明子[気象予報士/サイエンスライター]
Twitter(@imaia78)

 

参考文献:
「雷をひもとけば」新藤孝敏著 電気学会
「雷の疑問56」鴨川 仁・吉田 智・森本 健志共著 成山堂書店
「雷のはなし」武智重之著 四電エンジニアリング