2024.07.04

雷の形

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雷は空気中をジグザグに進みます。なぜそのような形で進むのでしょうか。また、雷は「落ちる」というだけあって、雲から地面に向かって稲妻が進んでいく印象がありますが、実は地面から雲に向かって進む稲妻もあります。

雷はなぜギザギザした形なのか

雷の光はなぜギザギザの形をしていたり、枝分かれしたりしているのでしょうか。雷は空気中に電気が通る現象です。そもそも空気は電気を通さない絶縁体なのですが、雷の電圧がとても高いため、絶縁体である空気がイオン化して電流が流れてしまいます。これを絶縁破壊といいます。

私たちの目には、雷は一瞬で地面に落ちているように見えますが、実際にはその一瞬の間に、雲からの電気は進んでは止まり、進んでは止まりして地面に向かっていきます。雲からの電流は、空気の中でもイオン化が進んだところや湿気の多いところなど、電気が通りやすい場所を探しながら流れて行きます。このようにステップ状に進んでいくため、落雷に先行する放電の経路の先端はステップトリーダと呼ばれています。ステップトリーダは一度止まってから次の方向に進むので、雷の形はギザギザになったり枝分かれしたりするのです。
止まっているとはいってもたったの数十ms(1/1000秒)で、ステップトリーダの速度は200km/sなので、人間の目には一瞬のように見えるのです。

 

下向きだけでなく上向きに進む雷もある

雷は、雲から地面に向かって下方向に「落ちる」イメージがありますが、実は地上の高構造物(鉄塔や風力発電用風車など)から雲に向かって「上がっていく」雷もあります。これを上向き雷放電といいます。上向き雷放電は、鉄塔や樹木など高くてとがった場所で発生し、雲の高度の低い冬の雷雲で発生しやすい現象です。冬は雷雲の雲底が2km以下であることも珍しくないため、特に上向き雷放電が発生しやすくなります。一方で夏は雷雲の雷底が約5km以上と高いため、夏の上向き雷放電は雷全体の1%以下と非常に珍しい現象です。ただし、山頂や鉄塔などの高い場所では夏でも上向き雷放電が発生することがあります。

上向き雷放電は一度の雷でたくさんの電流が流れるケースが多く、落雷による建物の被害が大きくなりやすいのが特徴です。これは、下向きの雷放電の持続時間が数百µ秒(約1万分1秒)程度であるのに対し、上向き雷放電の持続時間は、数十ms~数ms(1/100~1/10秒)と非常に長くなる傾向があるからです。

今井明子[気象予報士/サイエンスライター]
X(@imaia78)

 

参考文献:
「雷の疑問56」鴨川 仁・ 吉田 智・ 森本健志 共著 成山堂出版
「雷」小林文明 著 成山堂出版
「稲妻と雷の図鑑」吉田 智 グラフィック社
雷ぶらり-雷のメカニズム-落雷の人体への影響(https://www.franklinjapan.jp/raiburari/knowledge/lightning/41/
POWER ACADEMY 第25回 雷の不思議 なぜ、カミナリはジグザグに落ちていくのか?(https://www.power-academy.jp/electronics/familiar/fam02500.html