2023.11.16

雷に打たれたらどうなる

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雷が落ちると、人間だけでなく、動物や植物もさまざまな被害に見舞われます。どのような被害に見舞われるのでしょうか。

人や動物、植物などが雷に打たれたらどうなる?

雷により裂けた木雷は非常に強い電気なので、人間に落ちたら当然危険です。特に、人間の体の多くは水でできているため、電流を通しやすいです。落雷で体内に強い電流が流れることで、体にさまざまな損傷を引き起こします。具体的には、心肺停止や火傷、意識障害や鼓膜穿孔などが挙げられます。(詳しくはこちら)人間だけでなく、大型動物であっても、落雷したら命に関わります。落雷でインドゾウが死亡したり、アメリカパイソンが大やけどを負ったりする事例もあります。

また、体に直接雷が落ちなくても、地面を伝った電流によって被害を受けることもあります。海に落雷して、電気が海水で濡れた砂浜を伝って砂浜にいた人が感電する事例もよく報告されています。また、2016年には、高原への落雷で、その場にいた300頭を超えるトナカイが大量に死亡した事故も発生しました。これは、地中に永久凍土があり、氷が水よりも電気を通しにくいため、落雷に伴う雷のエネルギーが地中深くにまで行かず、地表を伝って広がり、地面にいたトナカイの体に電流が走ったことが原因だと考えられています。

では、木に雷が落ちた場合はどうなのでしょうか。木に雷が落ちると、木の中の水分が雷の電流により蒸発して体積が膨張するので、幹が折れたり割れたり、幹の内部が焦げたり発火したりします。落雷がもとで森林火災が起こることもよくあります。

ゴルフ場のポールなど、平地の中にある少し背の高いものに雷は落ちやすいのですが、その落ちた雷が地面を伝うと、あとに火花のような模様が残ります。このような模様のことを、リヒテンベルク図形といいます。

<リヒテンベルク図形とは>
もともと電気を通さないもの(絶縁体)に高い電圧をかけると、なんとか電気が通ろうとして、絶縁体の表面に電気が通ります。この電気が通った後には静電気が残っているのですが、その静電気を粉などを使って可視化すると見えてくるのがリヒテンベルク図形です。

 

雷に打たれて生還した人はいる?

雷に打たれるのはこのように非常に危険なことなのですが、生還した人もいます。雷に打たれたことでの死亡率は4分の3程度という研究結果もあります。生還した人の多くは、雷のエネルギーが小さかったか、雷の電気が体内を通らず、人体の表面を通ったというケースです。これらのケースでは死なずに済むとはいえ、意識障害やしびれ、火傷や運動障害などの被害は受けるので、危険であることには変わりはありません。

世界には、7回も雷に打たれてから生還した人がいて、ギネスブックに記録されています。その人は、1回目の落雷で足の親指の爪を失い、2回目で眉毛を失い、3回目は左肩にやけどをし、4回目に髪に火が付き、5回目は再び髪が燃え、6回目は足首を負傷し、7回目は胸と腹部にやけどをしました。命に別状はなかったとはいえ、よくもこんなに雷で体に傷を受けて生き延びることができたものです。

 

今井明子[気象予報士/サイエンスライター]
X(@imaia78)

 

参考文献:
「雷の疑問56」鴨川 仁・ 吉田 智・ 森本健志 共著 成山堂出版
「稲妻と雷の図鑑」吉田 智 グラフィック社
「雷から身を守る-事故の変遷から見た落雷環境」横山茂 IEEJ Journal,Vol139 No.7,2019
「落雷における死傷と野外スポーツにおける安全対策の研究」北川信一郎
「落雷害研究の現状と展開方向」鈴木覚 日林誌(2020)102:212-220
WIRED 自然による大量虐殺──トナカイ300頭を殺した「雷のナゾ」(https://wired.jp/2016/09/03/lightning-kill-300-reindeers/
科学技術週間 (1) リヒテンベルク図形とは?(https://www.mext.go.jp/stw/outline/interview_1.html
Most lightning strikes survived(ギネス記録)(https://www.guinnessworldrecords.jp/world-records/most-lightning-strikes-survived