2025.12.24

宇宙に向かう雷

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雷といえば積乱雲の中や地面に向かって放電が行われるものだと思うかもしれませんが、実は宇宙に向かって放たれる雷もあります。これを高高度放電発光現象といいます。

高高度放電発光現象はごく最近認識された


出典:NASA HPより 

高高度放電発光現象は、積乱雲の上から高度80kmの電離層の間で放電現象が行われます。この現象が科学的に認識されたのは1990年代とごく最近のことです。しかし、1927年にノーベル物理学賞を受賞したウィルソンは、「雷に起因して、雷雲の上でも放電が発生する」と高高度放電発光現象の存在を予言していました。また、そのころから航空機のパイロットなどによっても目撃されていました。その後、1989年にビデオカメラの調整中に雷雲の上に2本の噴水上の発光が観測されたことがきっかけで、研究者の間で高高度放電発光現象が注目されることになりました。

高高度放電発光現象には何種類かあり、色や形で分類されています。その種類は大きく分けて、スプライト、エルブス、ブルージェット、巨大ジェットの4種類です。これらは、1990年代から2000年代に次々と発見されていきました。

高高度放電発光現象の種類


雷と高高度放電発光現象の概念図

では、それぞれの高高度放電発光現象をくわしく説明します。
まず、スプライトは落雷によって発生し、高度50~90km程度の場所で空が赤色に光る現象です。形はさまざまで、ニンジン型、円柱型、クラゲ型、天使型などがあります。

エルブスは、高度90kmあたりに出現する、ドーナツ状の形をした赤い発光現象です。このドーナツ状の光の直径は300~700km程度です。こちらは、落雷のリターンストロークに伴う、強い電磁波によって発生すると考えられています。

ブルージェットは、積乱雲の雲頂付近から成層圏に向かって進む、円錐形で青色の発光現象です。高度50kmにまで達するものはブルージェット、25km程度までのものはブルースターターと呼ばれています。ブルージェットはスプライトと違い、発生の前に落雷は必ずしも観測されるとは限らないのが特徴です。

巨大ジェットは、積乱雲の雲頂から高度約80kmにまで伸びる放電で、下の方は青く、上の方が赤い色をしています。形は、円錐形から木の枝のような形に変化していきます。

高高度放電発光現象はいつ、どこで見られる?

高高度放電発光現象のなかでも、もっともよく発生するのはエルブスで、発生頻度は地球全体で1分あたり3回程度です。落雷自体は地球全体で1秒に50回程度発生しているので、落雷に比べるとなかなか発生しない現象であることがわかります。

なお、高高度放電発光現象は、国際宇宙ステーションや人工衛星などから観測できますが、地球上でも観測できることがあります。雲の影響の少ない高い山の山頂に登り、数百km先の積乱雲を見ると、その上で高高度放電発光現象が発生しているのが見られるかもしれません。

 

今井明子[気象予報士/サイエンスライター]
X(@imaia78)

参考文献:
「気象の超基本」今井 明子 著 朝日新聞出版
「雷」小林 文明 著 成山堂出版
「稲妻と雷の図鑑」吉田 智著 グラフィック社