積乱雲の一生

「積乱雲」には発生と消滅のサイクルがあります

雷雲の最小単位は「対流セル」といいます。

雷雨をもたらす積乱雲は、複数の上昇流域と複数の下降流域で構成されています。その構成要素であるひとつひとつの上昇流や下降流対流セルまたは単に単一セルと呼んでいます。その直径は5~10kmで、寿命は20~60分程度です。
対流セルは単独で発生しその寿命を終える場合もありますが、通常、発達段階の対流セルがあちこちに発生することの方が多くみられます。

ここで、対流セルの積乱雲がどのように発達して消滅していくのかみていきましょう。

発達期

カリフラワー状の積雲がモコモコと成長している段階です。

積雲が見え始めたときから、最初の降水が地上に達したときまでの段階をいい、継続時間は10~30分程度です。
この段階では雲の中はすべて上昇流となっています。雲粒が成長して水滴、氷滴(あられ等)が盛んに生成されていますが、雨は降っていません。雲内の上昇流は毎秒数十cmから数mで、毎秒20m(時速72km)に達することもあるといわれています。


最盛期

上昇流と下降流が共存する時、雷を伴った激しい雨が降ります。

雲の中に上昇流と下降流が共存するのが最盛期です。
積雲が発達していくと雲頂がぼやけて筋状の雲(巻雲)が見られるようになります。この状態から積乱雲といわれ、これが雷雲です。雲頂の巻雲が強い風に流されて水平に拡がり、カナトコ状になる積乱雲もあります。
雲頂は-20℃以下となり、水蒸気はほとんどが凝結して雨粒とあられや氷晶の数が増加します。氷晶は互いにくっつき合って大きくなり、やがて雪やあられに成長します。上昇流が強いと、あられはなかなか落下しません。あられや氷晶が上昇下降を繰り返し互いに衝突して電荷を帯びるようになります。このとき電荷の分離が起こり、軽い氷晶はプラスの電荷を帯びて上昇します。-10℃より低温のあられはマイナス、高温のあられはプラスの電荷を帯びて下降します。こうして雲の上部にプラスの電荷、-10℃以下の中層はマイナスの電荷、それより下の層はプラスの電荷に帯電します。(雷のメカニズム)あられ等は落下する途中で溶け、地上では雨が降り出します。それに引きずられるように下降流が生じます。雷も発生し、雨は一段と激しくなり、あられや雹を伴うこともあります。雨粒が蒸発することにより、気化熱を奪われて冷やされた空気は重くなり、下降流はさらに速度を増します。

雲内では下降流域が次第に広がり、冷えた下降流は地面に到達すると周囲へと広がっていきます。この冷気の先端はガストフロントと言われ、ガストフロントの通過後は、冷気に覆われ、気温が急降下するとともに地上気圧は急上昇します。雨が継続するにつれ、下降流域は下層から拡がり、やがて雲全体に広がったときが最盛期の終了です。最盛期の持続時間は15~30分程度で雲頂は十数kmに達することがあります。


衰弱期

上昇流はなくなり、雲は消滅していきます。

下降流が雲全体に拡がり、上昇流がなくなると、衰弱期に入ります。この状態は20分程度続き、雨は弱まりやがて止みます。地上では冷気が遠くまで拡がるため、暖かく湿った空気は冷気によって遮断されて、上昇流、降水もなくなるため、下降流も弱くなります。雲中の気温も外気温とほぼ等しくなり、風も収まり、積乱雲の一生が終わります。